地球は回る

インドの話、後半。

ガンジス川のあるバラナシで東大くんと別れ寝台列車でニューデリーへ。
ニューデリーは埃まみれの大都会。駅から出た途端、ひっきりなしに売込みの嵐。三輪タクシーやら、ガイド、ホテルの紹介業者、各種お店の呼込み、飴屋、チャイ屋、風船屋、はては耳かき掃除屋までありとあらゆる業者からのアピール。まさに10メートル間隔で話しかけられる。荷物が重いのと長旅で疲れてたのもあり耐えられなくなったのでひっついてくる4、5人のインド人を集めて話をする。家族のために稼がなきゃいけない君たちの事情はわかる、だけど僕は疲れ切って死にそうなんだ、お願いだからしばらく一人にしてくれと頼む始末。これ一人旅なんですけど。

インドにいった人は、どっぷりハマってしまうか二度と行きたくないかのどちらかだ、と言われている。
列車は遅れるは、ガイドに騙されて人間不信になるは、バスに乗ったら変な郊外に連れて行かれるはで限界に達してた僕はこの時点で完全に後者のほうだった。
あまりに自分の思い通りにならない毎日にイライラしていた僕は日本の生活スタイルを象徴するあるモノを身につけていたことに気がついく。

腕時計だった。

おそらく先進諸国から来た人は無意識に一日が24時間に区切られている感覚があるのではないか。1時間は60分で1分は60秒。まるで、目には見えない時計のメモリが流れていく時間に刻まれているような感覚がある。
それに対してインドという国は一日は日が昇り太陽が沈んで、月がでてと地球のリズムで動いていた。

それに気がついた時、街中の雑踏の中で、遠くの地平線が見えた気がした。回っていく地球のなかで僕らは生きていた。

あとは簡単だった。時計を外し、日が沈むまでにうまくいけばいいかと思うようにした。
余裕ができると鬱陶しかったインド人も楽しい隣人になり、店のなかでお茶とかだしてくれたりする友達が何人もできた。

インドにハマって帰ってくることができて良かった旅だった。

まだイギリス人の女の子に頼まれて一日偽装結婚した話とか、散歩にでたら無一文で迷子になったアホな日本人を助けた話とかいろいろあるけどそれはまた次の機会に。




HIROYUKI IGUCHI

バレエ振付家・教師 井口裕之のホームページ クラシックバレエ・コンテンポラリーダンスのクラスや振付作品の紹介をしています。

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