勅使川原三郎と愛知県芸術劇場2

勅使川原三郎さんの名前を初めて知ったのは中学生の時だったかな。本屋で見かけた著書「骨と空気」を立ち読みした時。インパクトのある題名と著者の名前に思わずとってみたが、内容がぶっ飛んでて「うわっ!この人頭おかしい!」となったのを覚えている。中学生には刺激が強すぎる世界観。

勅使川原三郎さんという人は、日本人の振付家、ダンサー、演出家、芸術家として世界中で認められた大御所中の大御所。
フランスで開催されていた振付家のコンペティションで2位(1位なしだったので実質最優秀賞)を受賞され、飛ぶ鳥を落とすいきおいでパリオペラ座をはじめ世界中の名だたるバレエ団で作品を作りつづけた巨匠。

もとは彫刻家目指してたけどコツコツ彫るより自分の身体で表現したほうが早いって思ってダンスを初めたとか(お弟子さんからの又聞き情報)
パントマイムとバレエの経験から独自のダンスを生み出していった人でダンスを総合美術として表現した天才。

僕が22か23才の頃にBunkamuraオーチャードホールの企画で勅使川原さんがオペラの演出をされることがあり、オペラのなかのダンサー探しているとのことでオーディションにいった。
メインがオペラとはいえ勅使川原さんの演出、そして振付を踊れることはとても光栄だったのでかなりリハーサルはキツかったが素晴らしい経験だった。Bunkamuraと大分で上演し、その後スコットランドのエジンバラで開催される歴史ある芸術祭まで連れて行ってもらった。

照明を何時間もかけて作り込んでいくのだが、オペラシンガーというのは雇用契約がしっかりとしているので長時間の拘束ができない。なので契約がしっかりとしていないダンサーが代わりをやる(例えば衣装きてその辺に立ってて、とかね)舞台上にいるときはなんでこんな照明にこだわるんだろう?と不思議だった(というか早く終わってくれと思っていた)が、客席から見た時に度肝を抜かれる。
照明、舞台美術、衣装で一枚の巨大な絵がそこに完成していた。
僕も振付家を目指したいと思った瞬間だった。

それ以来ずっと追いかけ続けている僕のスターだが、あまりに早く行ってしまうのでまったく追いつけず、というかさらに突き放される。
近年は東京の荻窪に自分専用の小劇場作っちゃったりと全くスケールが違いすぎるぜ。

愛知県芸術劇場もまた楽しくなりそうだね。


HIROYUKI IGUCHI

バレエ振付家・教師 井口裕之のホームページ クラシックバレエ・コンテンポラリーダンスのクラスや振付作品の紹介をしています。

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