師弟関係
師である故・金田和洋先生が亡くなってはや数か月。僕がこれからの人生を考えるうえで重要なターニングポイントとなった出来事の一つだった。ここ数年はほとんど顔も出さない不詳の弟子に最期に大きな課題を残し旅立ってしまった。
20歳そこそこの頃、できもしないのに「いつか先生に恩返しします!」などと生意気なことをいったら「その恩は私たちではなく次の世代の子たちに渡しなさい」と。
その貴重な言葉の意味もわからずに世の中にでた僕はその後いろいろな人に会い、成長する中でいつもある違和感を覚える言葉に出会う。
「感謝しなくてはいけないよ」
はい。。ありがとうございます。としか答えようがない。
やってもらったことの価値を理解しなさいってことだが、見返りを気にしているようでどうもストンと心に落ちない。ありがとうございますという笑顔の自分を外から眺めているもう一人の自分。こんなことを書くと、井口は感謝を理解できない傲慢なやつだってお叱りをうけそうだがそうではなく、ただ受け止めるまでのスパンが短すぎるのだ。ボールの形もわからないぐらい近距離でキャッチボールをしている感じがする。
師はかつてものすごく高いボールを投げた。おそらくこんな若造に今言ってもわからないだろうと思っていたのだろう。どのあたりを狙って投げたのかはわからない。10年先、20年先にそのボールを受け止めれるようになったら理解するだろうと。その時に初めて師の偉大さを弟子は理解する。まるでたどり着けないような高さ。
上善如水。天から降り注いだ雨は大地を潤し下へ下へと流れていく。決して水を返せとは言われないものだ。
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